
部下さんと話しているのに、なぜか伝わらない。
指示は出しているのに、思った通りに動いてくれない。
そんなとき、「自分の伝え方が悪いのかな」と悩んでしまうこと、ありますよね。
でも、うまくいかない理由は、単なるコミュニケーション不足だけとは限らないんですね。
加藤洋平さんの『なぜ部下とうまくいかないのか』でも中心に扱われているように、上司さんと部下さんでは、そもそも“ものの見え方(価値観や前提)”が違うことがあると整理されています。
この記事では、成人発達理論(大人の成長段階を扱う考え方)を手がかりに、すれ違いの正体と、明日からできる関わり方を一緒にほどいていきますね。
噛み合わないのは「能力」より「見えている世界」が違うからかもしれません

結論から言うと、なぜ人は部下とうまくいかないのか?の答えは、相手が見ている世界の前提が違うから、という見立てが有力です。
同じ言葉でも、受け取り方が変わってしまうんですね。
本書の文脈では、部下さんを「できる・できない」で単純に分けるのではなく、意識や認識の段階の違いとして捉えることが大事だとされています。
ここを押さえると、「注意しても直らない」のではなく、「見えている地図が違うのかもしれない」と落ち着いて考えやすくなりますよね。
すれ違いが起きやすい3つの理由

「言った・聞いた」より前に、価値観の前提がズレる
部下さんと合わない最大の理由は、価値観や認知の前提が違うことだとされています。
たとえば上司さんは「全体最適」を見ていて、部下さんは「自分の担当の安全」を見ている。
この状態だと、同じ指示でも意味が変わってしまうんですね。
「なぜ分からないの?」ではなく、「何を大事に見ているんだろう?」と考えると、会話の入口が変わりやすいです。
部下さんの発達段階に、関わり方が合っていないことがある
成人発達理論をベースにした説明では、人は大人になっても、少しずつ「世界の捉え方」が育っていくと考えます。
だからこそ、部下さんの段階によっては、上司さんが良かれと思ってやっている関わりが、逆に噛み合わないことがあるんですね。
ここで大事なのは、発達段階を理由に相手を見下さないことです。
近年の解説でも、各段階の価値を尊重することが注意点として挙げられています。
「指示」より「対話」が必要なタイミングがある
関連解説では、単なる指示命令型からの転換として、問いかけや対話が重視されています。
特に効果的だと言われているのが、「君はどう思う?」と問いかけることなんですね。
注意や正論で押すより、相手の考えを引き出して、言葉にする支援をしたほうが、前提のズレが見えやすくなります。
よくある3つのすれ違いパターンと、やさしい対処のヒント

自分に関係することにしか関心を示さない部下さん
「チームのことを考えて」と言っても響かない。
こういう部下さんは、自己中心的という性格の問題というより、“自分に関係する範囲”で世界を捉えやすい段階として説明されています。
このときは、いきなり「視野を広げて」と言うより、範囲を少しずつ広げる問いが合うかもしれませんね。
- 「この作業が遅れると、次の人は何が困りそう?」
- 「お客さま目線だと、どこが不安になりそう?」
“自分の外側”を想像する練習を、小さく積み重ねる感じです。
上司には従順だけど、自分の意見を言わない部下さん
「どう思う?」と聞いても「大丈夫です」「問題ありません」だけ。
これ、気になりますよね。
本書や関連する文脈では、こうした状態は、まだ自分の内側の価値観を十分に言語化できていない、と扱われることがあります。
この場合、いきなり意見を求めるより、答えやすい形にしてあげると安心しやすいです。
- 「A案とB案なら、どっちがやりやすい?」
- 「不安が1つあるとしたら、何がいちばん近い?」
「意見を言っていい空気」を作ることも大切なので、出てきた言葉をすぐ評価せず、「なるほど、そう見えるんですね」と受け止めるのも効きやすいですよ。
自律性が強すぎて、他者の意見を無視してしまう部下さん
仕事はできるのに、周りとぶつかる。
こういう部下さんは、自分の価値体系に強く固着している状態として説明されることがあります。
「正しいのは自分」というより、「自分のやり方で成果を出してきた」経験が強いのかもしれませんね。
このタイプには、頭ごなしの否定より、協働の経験が成長の鍵になると言われています。
- 「今回は“二人で合意して進める”をゴールにしよう」
- 「相手の案の良い点を3つ見つけてから、自分の案を足そう」
“勝ち負け”ではなく、“一緒に作る”に視点を移す支援ですね。
関係がほどけやすくなる、3つの小さな工夫

まず「相手の地図」を知る質問を置く
指示の前に、短くでいいので聞いてみるのが役立ちます。
- 「いま何がいちばん大事だと思ってる?」
- 「どこがリスク(心配)に見える?」
価値観の前提が見えると、言葉の選び方が変わりますよね。
「正解」より「言語化」を手伝う
部下さんの成長支援では、相手の意見を引き出しつつ、本人が考えを言葉にできるようにすることが重要だとされています。
たとえば、部下さんの発言を要約して返すだけでも効果があります。
「つまり○○が心配、ということですね?」
理論は“評価”ではなく“理解”に使う
成人発達理論は、人を上下で評価するためではなく、成長プロセスを理解するための羅針盤として使うべきだとされています。
「この人はこの段階だからダメ」ではなく、「いまはここが見えやすい時期なのかもしれない」と考える。
そうすると、上司さん自身も少し楽になりやすいんですね。
まとめ:うまくいかないのは、ズレの“正体”が見えていないだけかもしれません

なぜ人は部下とうまくいかないのか?と悩むとき、私たちはつい「伝え方」や「やる気」に目が向きやすいですよね。
でも有力な整理としては、コミュニケーション不足だけでなく、上司さんと部下さんの“ものの見え方”の違い、そして発達段階に応じた関わり方のズレがある、という考え方があります。
だからこそ、注意や指示を増やすより、まずは対話で前提をそろえる。
とくに「君はどう思う?」という問いかけは、相手の世界の見え方を知る入口になりやすいです。
すれ違いは、どちらかが悪いというより、地図が違うだけのことも多いんですね。
私たちも一緒に、相手の地図を少しずつ確かめながら、無理のない関係の作り方を探していきましょうね。